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2020.07.09 Thursday

1966 TRIUMPH T120R BONNEVILLE オーナー山口県K様

 「トライアンフ欲しいんですけど…」遠く山口県からKさんが来てくれた。聞けば予算は全て込みで150万円。しかし、こうした古いブリティッシュをまともに走らせるには多額の修復費用が必要になる。「諸費用に消費税を差し引けば車体価格は120万程度だ、それではまともな車両は作れない…参ったなぁ…」

 

  ここで引き下がっては男が廃る。遠くから来てくれたKさんの為にベース車両を捜しまくる。「オイルインフレームは当然だ、なんならハリスでもいい…」そして数か月後、彼の1966 TRIUMPH T120R が海を越えてやって来た…

 

 突然だがこうしたクラシックジャパニーズ達の価格が異常な状態になっている。Z2にマッハにCB750とは今や200万円は当たり前、300万円越さなければ満足できる品質は保証されない時代に来ている。で、ブリティシュも全く同様。300万円無いならやめた方がいい。それを諸費用税込みで150万で買うと言うKさんは、最早只の常識外れに過ぎない。

 

 今回は当然ながら「布引お手軽倶楽部最低クラス」だ。使えるモノは再使用が基本だが、最低クラスでは使えないモノでも何とか再使用が大原則、しかし作業は高品質に進んで行く…「布引お手軽倶楽部」は→コチラ、「布引ブルジョア倶楽部」は→コチラ

 

 クランクの入るボトムは完璧に整えられ、シリンダー回りも万全に…

 

 シリンダーヘッドもこれ以上ない程のコンディションへと… 

 

 車体も抜かりはない。走る為の安全に快適性、操作性を重んじる布引テクニカルポリシーを貫く…(※詳しい作業の内容は最後のプチ報告を御覧ください。)

 

 当然の事、外装に回す予算など全くない。「タンク このままでいいよね…」Kさんに話すと「塗って欲しいっす!…」

 

 そして布引自社ペイント開始、美しいオリジナルカラーへと再現だ… (ペイント作業のご案内は→コチラ)

 


 結局のところ、こんなに素晴らしい超オリジナルモデルへと変貌を遂げました…(拍手大、冒頭の写真と比べてみて下さい)。実はKさん、修理の間に少しずつお金を貯めて50万円プラスα分増額してくれたのです、その前向きな気持ちが松枝超嬉しい訳です!

 

 そして新規検査に試運転の後、Kさんのボンネヴィルを愛車のシボレーK1500に乗せ山口県まで届けました…

 

 ボンネヴィルを降ろした後、「布引流英国車講座実技編」をマンツーマンで始めた。「スルスルスル…スルスルスル…」SR400に乗っていたKさん、だがエンジンは中々かからない…

 

 私も彼も簡単にかかると思っていたけれど、今は心理的にも体力的にも限界だ。でも「やるしかない、がんばれKさん!…」

 

 更にエンジンの始動はつづく「スルスルスル…スルスルスル…ダメだ…」「スルスルスル…スルスルスル…ダメだ…」「もう少しこうしてごらん…そうそう、もうちょっとこうだよ…」「スルスルスル…スルスルスル…ダメだ…」 延々と続いた後、結構カタチになってきた。「ん?…次かかるよ…」 そう言った瞬間 「ズッバーーーーーーーァーーン!…」 「よっしゃー!」Kさん頑張った!自分の力でエンジンをかけた!ここが大事だ。そうなんだ…誰にも分からない、経験した事のない者には分からない…モーターサイクルライフでたった一度しかないこの感動の瞬間をふたりは一生忘れない…

 

 そして、「一旦エンジンとめて…ヘルメットかぶって…」間髪入れずに走らせる…「エンジンかけて…好きなだけ走っといで、そらっ!…」 いちいち止めてエンジンをかけさせるスパルタ方式の布引英国車講座実技編 「ズボッズボッズボッズボッズボッ!…」Kさんがよろよろと走り始めた…

 

 「ズボズボズボ…チャッ…ズボズボズボ…」 「遅すぎて倒れそうだな…大丈夫かな…」 「ズボズボズボ…チャッ…ズボズボズボ…」

 

 何度も何度も走っているうちに「ズバズバズバズバズバズバッ!…チャッ…ズバズバズバズバズバズバッ!…」「ん?…ペース突然上がったなぁ…いいぞ…」

 

 「ズバズバズバズバズバズバッ!…チャッ…ズバズバズバズバズバズバッ!…」ずっとずっと遠くへと自分の力で走り去っていく…「Kさん、ちゃんと出来るじゃない…」慣れて来たんだ。きっとSR400の時の自信が蘇って来た。「走りにリズムが出てきた、いいぞ行けーっ!‥‥」

 

 今回のKさんのボンネヴィルの作業は手前味噌ながら相当努力した。予算が低いなりになんとかモノにしてやりたい。ふんだんににパーツを使って高額な車体を作るよりも遥かに難しい作業だ。

 

 オイルインフレームやハリスよりも高額なユニット650を強引に決めた事は自らを苦しめる事になる。それも自分で決めた事、後ろは決して振り向かない…

 

 「なんだよ、これもダメか…」 「んー…これも使えないなぁ…」ああだこうだとひとりごとをこぼす日々…死ぬほど寒い冬場でも、額に汗のこぼれる夏場でも「Kさん、今に見てろよ、必ず納得できるモノを作ってやるっ!」

 

 私は他人がどういう人物なのか即座に見抜くクセがある。パッと見て「…なるほど…こういう人間なんだな…」それは殆ど違わない。Kさんとは二度、短い時間話しただけだ。しかし、彼を把握するには十分な時間だった。それだからこそ彼を信じて作業に没頭できるんだ…

 

 山口県は遠い、見たところトライアンフを維持する環境もない。空を見上げても誰かが助けてくれる気配すら感じない…愛車を維持できる環境…それは彼がトライアンフを走らせる為に無くてはならない最も重要な事なのに…

 

 その為に私は彼のトライアンフを誰よりも懸命に作り上げた。遠く山口県から兵庫県の布引クラシックスを頼って来てくれた、その恩に対してそれ以上のモノで返すことが私の義務だからだ。

 

 実は、「自分で磨いてみて、心に残るから…」オーナー自身も車両づくりに参加して欲しいとこうしたモノを委ねている。完成した愛車のカバーが自分が磨いたモノだというその意味は違ってくる。それを背負う私の心も変わるんだ…

 

 丹後半島を走りながら考えていた「山口には時々行く事になるなぁ…」完全に整備したモノでもメンテナンスしなければ壊れてしまう、それが1960年代のモーターサイクル。オイル交換の仕方にプラグ交換。バッテリーの管理にドライブチェーンの調整等々、ふたりで工具を使いながら布引路上講習会もしたんだ。

 

 「ズドゥーーーーン…チャッ…ズバズバズバズバズバズバッ!…」ユニット650のコーナーリングは本当に楽しい。軽い車体に活発なエンジンは自ら走れと言ってくる。

 

 いいかいKさん、トライアンフの走りとはメリハリだ。直線では「…ズバズバズバズバズバズバッ!…」頭を下げて目一杯加速するんだ!

 

 コーナーでは思い切って飛び込み倒す!クリッピングポイント過ぎたら徐々にスロットルを大胆に開けて行く!「ズドゥーーーーン…チャッ…ズバズバズバズバズバズバッ!…」これこそがトライアンフの走りだ…

 

 その為には先ず直線路でブレーキングの練習をしよう、飛行機で言うタッチ&ゴーだ。フットレストに膝に腰、下半身で車体をブロック!次に目線を遠くに置いて!前後のブレーキをバランスよく使い!思い描く車速に減速だ!(停まるんじゃないぞ)…そして再びスロットルを大胆に開けながら大きく加速する。この反復練習は今の君に最も必要な事だ。

 

今、彼は40代だ。恐らくこれがトライアンフを買う最後のチャンスだ。先にも言ったがこのクラシックモーターサイクルの異常な高騰は増々激化する。トライアンフが発売されていた1960年代、そもそも貧乏人には買えない代物で金持ちの道楽であった状況が2020年代に再び訪れるだけの話でもあるんだ。それを彼も感じていたかもしれない。

 

 日本人は忙しい、常に余裕のない生活を強要される、お金も時間も遊びも…だけれどそれでも生きて行かなきゃならない。「トライアンフに乗りたい…」そんな生活の中で自分を確かなモノにする為に彼は決めたんだ…

 

 彼には素敵な奥さんと目に入れても痛くない程のかわいいふたりの娘さんがいる。そんな家族をこれからも守って行かなきゃならない。「馬鹿野郎ーっ!」なのにトライアンフを買うとは不届き者にもほどがある!家族の理解があっての事だろうが、更に愛情もって皆を導いていくんだぞ。いつの日かトライアンフに乗る素敵なお父さんと言われるようにと願って止まない…

 

 全てを終えて私は帰路に着いた。今回のKさんのボンネヴィルとは一体何だったのか?ひとりシボレーK1500を走らせながら考えてみた…それは、「彼の大きな賭けだったんだなぁ…」一人の人間が夢見る事は小さな事じゃない。彼は私を信じてくれ常に歩み寄ってくれた。私は彼の為に期待以上のモノを届けた…

 

 「ふたりで喜べて良かった…」期待に応える事がどれほど大切で大きなモノなのか、Kさんと彼のボンネヴィルが改めて教えてくれたんだ…「ありがとうKさん…」シボレーK1500の窓を開け山口の爽やかな海風を左手に受けながら…私は小さくつぶやいたんだ… 2020.07.11 布引クラシックス 松枝

 

オーナーのKさんから連絡頂きましたよ。

「今日は本当に遠くからありがとうございました!一生の思い出になる日になりました!感動と感謝の気持ちでいっぱいです!松枝さんとの出会いは僕にとってとても大きなものとなってます!話をしていてバイクだけでなく人生の勉強になります!今度はキャンプでゆっくり話がしたいですね!この度は本当にありがとうございました!これからもよろしくお願いいたします!」

嬉しいですね、今度九州にキャンプツーリングする事になりましたよ。彼が颯爽と走る姿…楽しみです。松枝

 

試運転記録他

目的地・・・・・・京都伊根町、経ヶ岬、夕日ヶ浦海岸他

走行距離・・・・・317km(一般道)

使用ガソリン・・・12.3L(プレミアムガス)

燃費・・・・・・・25.8km/L

参考航続距離・・・160マイル以内の給油をお勧めします。

 

ぺトロールタンク容量(実測値)  2.7 Imp.Gal.

メイン・・・・・11.2L (残量100cc)

リザーブ・・・・0.8L (残量200cc)

トータル・・・・12.3L(残量300cc含)


1966TRIUMPH T120R 山口県K様のプチ報告 是非ご覧ください。

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